ウェルテル、と言った覚えはない。
実際、ブラームスは出版社ジムロックにこう書き送った。
「ピストルを押し付けた頭を楽譜の表紙にすればいい。この作品のイメージが湧くだろう?それに使う僕の写真を送るよ!もし色付けしたいと思ったら上着は青でズボンは黄色、乗馬靴を履かせるんだ。」 “ブラームスと、若きウェルテル” の続きを読む
公演のプログラムノート
ウェルテル、と言った覚えはない。
実際、ブラームスは出版社ジムロックにこう書き送った。
「ピストルを押し付けた頭を楽譜の表紙にすればいい。この作品のイメージが湧くだろう?それに使う僕の写真を送るよ!もし色付けしたいと思ったら上着は青でズボンは黄色、乗馬靴を履かせるんだ。」 “ブラームスと、若きウェルテル” の続きを読む
ハンス・フォン・ビューローが最初にピアノを習ったのは、クララ・シューマンの父フリードリヒ・ヴィークであった。後にフランツ・リストに見いだされ、その娘コジマと結婚するが、その後色々あって…ブラームスの親友となった。 “R.シュトラウス、加速する世紀末” の続きを読む
ことのはじめ
さまよう 出会う 魅惑される 誘惑する
運命なきところに 運命の糸が芽生える
稀有の天才による最高傑作とされ、しかしその実演に触れる機会にめぐまれず ドビュッシーについて考えるたびに、後ろめたい気持ちにさせられてきた。
秘かな、でも最大限の期待と覚悟をもって臨んだ2018年7月30日
「ペレアスとメリザンド」を初めて観た。 “「ペレアスとメリザンド」 ミンコフスキ=オーケストラ・アンサンブル金沢” の続きを読む
夜がやってくる 月が光を帯びて
愛ゆえに 二つの鼓動が重なる
幸福な抱擁の時
…このような詩を、人は恋をしているときに書くのか。それとも、そこからは離れた場所で書くのか。
…どっちだろう。 “ブラームス、ピアノソナタ 第3番” の続きを読む
水の精は牧神に追われたシランクスを、水辺の葦として受け入れた
牧神はその葦を笛にして吹いている。
水の精エコーは、牧神によって引きちぎられ木霊となり、いつまでも繰り返し鳴り響いている。 “詩曲として、夜のガスパール” の続きを読む
なぜ月光なのだろう…
ずっと考えていた。 ターンタターン、ターンタターン ショスタコーヴィチがその語りつくせない人生の一番最後
ルイ・ヴィエルヌはギョーム・ルクーと同じ1870年の生まれ。
幼少より音楽の才能を示し、パリの盲学校に通う中で14歳の時にセザール・フランクに見出され、聴講生として彼の授業に参加しながら、ピアノとヴァイオリンそしてオルガン演奏の勉強を続けた。
フランクのヴァイオリンソナタがどのようにして発生した音楽であったか、これまで考えたことがなかった。考えようがないとも思っていた。しかし、フランクの全作品中でも際立って古典的な佇まいを示しているこのソナタの第4楽章に、突然別の音楽が重なって聴こえたことでそうも言っていられなくなった。 “フランク、ヴァイオリンソナタ” の続きを読む
ショパンには2歳年下の妹がいた。
名はエミリア。音楽のショパンに対して、文学のショパンともなるべき才能を若くして示した彼女は、兄フレデリクとともに「文芸娯楽協会」を立ち上げ、会長に就任した兄の秘書を務め、演劇の台本を書いて共に演じた。
兄との共作「失策、あるいは見せかけのペテン師」では、迫真の演技で市長役を演じる兄フレデリクの横で、エミリアは作者役として座っていた。エミリアは人を笑わせることが得意で、病弱な兄とは違って常に快活であったのに、14歳にして結核にかかり、そのまま回復することなく2か月後に死んでしまった。 “ショパン、ベートーヴェン” の続きを読む
1966年に出版された著作の中でブーレーズは、ウェーベルンの作品を引き合いに出して語っている。「つまり、その感受性はあまりにも唐突に新しいので、はじめて接すると、知的であるとみなされてしまうのだ。」― この言葉はまずその時代のものとして読まれるべきなのだけれど、もう少し考えてみたい。 “ウェーベルン” の続きを読む