ルイ・シュポア

1784年生まれ
ルイ・シュポアは若い頃からヴァイオリンのヴィルトゥオーゾとして活躍し、ヴァイオリンの肩当てを開発し、ベートーヴェンとは室内楽に興じる間柄でもあった。指揮者としてはいわゆるリハーサル番号を最初に使用した人であり、ワーグナーのオランダ人やタンホイザーを時代に先駆けて世に紹介した。

シュポアのオペラ「ファウスト」は、音楽的には同時期に作曲されたベートーベンの「フィデリオ」よりはむしろ「ドン・ジョバンニ」や「魔笛」に近いものでありながら、音楽のモティーフを物語と密接に関係させた点においてはワーグナーの先駆ともいえる作品であった。

ドイツ音楽界の重鎮として75歳まで生きたシュポアは、その生涯を通じてモーツァルトを作曲家としての理想像として見出し、ベートーヴェンの後期の作品を評価せず、ウェーバーよりはワーグナー初期のオペラを好んでいた。ここにドイツロマン派における歴史のもう一つの重要な線を見ることが出来る。

そんなシュポアが24歳の時に書いた大二重奏曲。第1楽章はモーツァルトの最後の弦楽四重奏曲のロマン派的展開というべきもので、第2楽章ではワーグナーの「夕星の歌」を先取りし、第3楽章にはメンデルスゾーンがそのまま引き継ぐことになる澱みない源流が溢れている。まったく恐るべき作品である。

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2016年 5月 2日(月) 20:00開演
「大二重奏曲」
ヴァイオリン:渡邊穣
ヴィオラ:小峰航一
http://www.cafe-montage.com/prg/160502.html