カロル・シマノフスキは1882年、ポーランド生まれ。つまりベルクやウェーベルンと同世代。
そのシマノフスキが1915年に作曲したヴァイオリンとピアノのための「神話」は、その斬新な手法と神秘的な響きが第1次大戦後に評判となり、特に第1楽章の「アレトゥーサの泉」はティボーやシゲティまでが録音する有名曲となった。
バルトークも「神話」にとり憑かれた一人で、出版された1921年に早速セーケイ(バルトークの協奏曲の初演者)とのコンサートで取り上げている。その時期にバルトークは自身のヴァイオリンソナタ第1番を作曲している。
ところで、バルトークはソナタ1番のヴァイオリンパートを書くにあたって、友人のヴァイオリン奏者ダラーニの助言を得ているが、そのダラーニはラヴェルの同時期にツィガーヌの成立にも関わっている。そうした様子は、バルトークの第1楽章と「神話」、第3楽章とツィガーヌを並べてみると見えてくる。
かわって、シマノフスキにはコハニスキという、強力な助言者がいた。コハニスキは若くしてレオポルト・アウアーの後任を務め、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲の成立にもかかわるなど、40代でガンのために死去するまで、その時代になくてはならないヴァイオリンの巨匠であった。
コハニスキはアルトゥール・ルビンシュタインとシマノフスキと共に「若きポーランド」というグループを作ったが、ルビンシュタインと共演したブラームスのヴァイオリンソナタ第3番の録音が残されている。この澱みなく流れゆくブラームスを聴くと、なるほど「神話」成立に彼が深く関わったことが了解できる。
ルビンシュタインの幼き頃、ヨアヒムをはじめブラームスと縁深い音楽家が家に来て室内楽に興じていたとのこと。
ブラームスの3番ソナタが「神話」と地続きの感覚で演奏された先程の録音は、断絶したものとされがちな19世紀と20世紀、ロマン派とそれ以降をつなげる強力な資料でもある。
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2015年11月 3日(火・祝) 20:00開演
「K. シマノフスキ」
ヴァイオリン:谷本華子
ピアノ:塩見亮
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