21世紀ファズマ

高速鉄道に乗り、窓から外を眺めていると、近くに見えるものは次々に空を飛び去って行くように感じられ、遠景はいつまでも静かなままそこにある… ベアート・フラーは自作Phasmaについてそう述べたそうだ。

家と家の間、舗装された道路、街の形成、それらを結ぶ幹線道路、その全てはその土地の法則にそれぞれ従って、あるべきところに時間をかけて設置されたもので、増減を繰り返し、変奏を奏で続け、終わりの来るまで永遠に未完成である。それらの全てが空を飛び去って行き、遠景が永遠を物語っている…。

21世紀の風景を、都市と都市をつなぐ高速鉄道の窓から眺める。眼に映った風景は、はたしてどの時間に切り取られたものなのか。それはただ今日の風景なのではない。1000年前の記憶を横切ったのかも知れず、100年後に訪れる未来を先ほど通り抜けたのかもしれないのだ。

境界をなくすという意識は20世紀のもので、21世紀は境界がすでになくなったものとして始まった。その時、人は同じ色の紙を手に持っていた。いま、私たちはすでにその紙をも手放そうとしている。20世紀が完全に前世紀となったいまになって、やっとPhasmaを聴くことができる。今夜、私たちはどの時間の風景を見るのだろうか。

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’19年1月27日(日) 20:00開演
「ファズマ」
ピアノ: 木川貴幸
http://www.cafe-montage.com/prg/190127.html