メシアンについて、気楽に何かを書くということがなかなか出来ない。
「わたし、クラシック音楽は詳しくないんですが…」と前置きをしないと、うかつにモーツァルトの話なんてした日には、変なことに巻き込まれるのではないかという、あの不安と似たようなものが、メシアンと自分の間には横たわっているような気がする。
メシアンは1908年生まれ。1992年までは生きていた人であった。
メシアンに師事したり、知り合いだったりした人たちがメシアンについての面白い話をどこかで提供してくれているはずなのに、星とか鳥とか、神秘とか異国趣味とか、普通に生活をしていてはなかなかついていけない世界の住人として、つまり俗世間からは隔たれた人というイメージはなかなか覆らない。
評論家のアレックス・ロスは、メシアンの周辺にいた人から話を聞いても、スキャンダルめいた面白い逸話などは全く出てこず、例えば「峡谷から星へ」を作曲したのが、実は大好きな甘いお菓子に誘惑されてのことだったとか、せいぜいそれくらいのものだと嘆いている。
ところでメシアンは京都賞の第1回の受賞者で、その受賞講演の内容をいまでもそのまま読むことが出来る。
http://www.inamori-f.or.jp/laureates/k01_c_olivier/lct.html…
メシアンは鳥博士だと、自分で言っている。ジョン・ケージがキノコ博士だったのと、おなじくらい面白く取り上げてもらえたら良かったのに‥
とにかく、メシアンの音楽には鳥のさえずりの模倣がよく出てくるけれど、フランス音楽で鳥といえば、
・ラモーの「鳥のさえずり」
・サンサーンスの鳥小屋
・ラヴェルの「悲しき鳥」
‥そして
・メシアンの「ヒバリ」- L’Alouette Calandrelle
さすが鳥博士ならでは、という鳥素材のクオリティなのです。
メシアンの音楽にはフランクの官能と爆発、ドビュッシーのリズム、ラヴェルのバーバリズム、そしてフォーレの混沌が綯い交ぜになっている。その作品のほとんどはフランス音楽の正統な後継というべきであるのに、なぜかメシアン本人は異国の鳥扱いのままである。
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2016年 4月16日(土) 20:00開演
「O.メシアン」
メゾソプラノ:林千恵子
ピアノ: 稲垣聡
http://www.cafe-montage.com/prg/160416.html