戦後最大の音楽の巨人、ピエール・ブーレーズの残したもの。彼の影響下に生み出された現代音楽の作品は数知れない。しかし、作曲家として立つ為にその影響を進んで受けた人、つまり彼のフォロワーの作品を並べ立てても、そこにブーレーズという人物の影響力をみることはできても、作品そのものの力の実寸大をみることにはならないのではないか。
そこで、ジャン・フランセの登場である。
ジャン・フランセは1980年当時、メシアン、そして「軽蔑」のドルリューと並んで、自作の著作権のみで生活している作曲家、そのエスプリの極みとしてフランス音楽を代表していた。
フランセはブーレーズのような曲は書かないと公言していた、にも関わらず影響を受けていたのだとすれば、そこにこそブーレーズ作品の力を見ることが出来るというものではないだろうか。
フランセは言った。「かつてベルリオーズやドビュッシーの不遇は、理解されないが為であったけれども、私の場合はむしろ簡単に理解されてしまう」
それが故に、彼の作品はフランスのアカデミズムの世界ではブーレーズに圧倒されて顧みられることがなかった。
「嫉妬しているだろうとよくいわれるが、もちろんしている。」
ブーレーズとは何から何まで正反対というべき、ジャン・フランセの「ディヴェルティメント」。この作品がブーレーズを意識して書かれたものであるとすれば、どうだろうか。
「ディヴェルティメント」はブーレーズの「ソナチネ」の9年後に作曲された作品。「ソナチネ」と同じく当時の名手ランパルの為に書かれ、その愛らしいプロポーションにも関わらず、危なっかしいスリル満点の作品。
この両作品の持つ爆発力。その煙の匂いはかつてドビュッシーやラヴェルの作品が放っていた火花と閃光の後継というべきであって、その後のいわゆる前衛作品には滅多に見られないものである。
フランセ作品の中に仕込まれた爆薬の匂いを嗅いだ後に聴く、ブーレーズの「ソナチネ」には、ドビュッシーの後継者としての、おそらくはブーレーズ自身が望んでいるであろうフランス音楽としてのありのまま姿がはっきりと映し出されるはずではないだろうか。
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2015年6月4日(木) 20:00開演
「フレンチ・コネクション」
フルート:若林かをり
ピアノ:若林千春
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