十二夜、ヴィオラ

フランスの作曲家レイナルド・アーンが当時の偉大なヴィオラ奏者モーリス・ビューに捧げた「独白とフォルラーヌ」という作品がある。
その作品の題名を紐解くうちに、ヴィオラという楽器の名前から、一つの物語が見た。

ヴィオラはドイツ語でブラッチェとよばれていて、それはイタリア語のヴィオラ・ダ・ガンバに対するヴィオラ・ダ・ブラッチョから来ているそうだ。フランス語ではアルトで、それはラテン語の”高さ”を意味するAltusから、男声の一番高い声(女性では一番低い声)を指すのと同じ意味でそう呼ばれている。

まことに突然ですが、シェイクスピアの喜劇「十二夜」の主人公がヴィオラという名前で、彼女は理由あって男の格好をして公爵に仕え、公爵が片思いを寄せる女性に惚れられてしまう役柄。その十二夜の第2幕第2場には、ヴィオラによる「指輪は彼女のもとに置いて来なかった」という独白があって、シェイクスピアの詩人としての資質が現れた名場面として知られている。

ところで、十二夜というのはクリスマスから12日目の夜のことで、その晩に大きな宴を設けることが流行って、十二夜といえばその狂乱の宴を意味するようになったほど。物事がひっくり返るという十二夜の古くからの伝統。男の格好をしたヴィオラという女性の独白、そして、男と女が入り乱れて踊る宴の夜。

男の声は高く、女の声は低くなるほどに中性的な魅力をたたえるという。それは例えば、バロックオペラでは男性歌手による女形、古典歌劇における女性歌手によるズボン役。それらのパートが性別を飛び越えた役割を演じることによって、観る人の性の感覚を新たに呼び覚ます役割を果たしている。

チェロの高音域と、ヴァイオリンの低音域を自在に行き来する楽器の名前が、アルトであり、ヴィオラである、というのはこうして考えていくことでも面白いと思った次第。つまり、アーンによる”Soliloquy et Forlane”という作品の存在。フォルラーヌという急速な舞踏、独白、そしてヴィオラという関係。

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2014年9月18日(木) 20:00開演
「独白と舞曲」
ヴィオラ:小峰航一
ピアノ:田中玲奈
http://www.cafe-montage.com/prg/140918.html