クラシック音楽において、イギリスのみならずヨーロッパ最後の大作曲家の一人といっても決して過言ではない天才ベンジャミン・ブリテンの作品を聴いてみたい。しかしながら、ブリテンの代表作のほとんどはオペラもしくは声楽を伴う作品で、特に日本では特別な機会がなければ実演に触れる機会がありません。
例えば、ブリテンの盟友ショスタコーヴィチであれば、数々の交響曲、弦楽四重奏曲などの室内楽曲、ピアノ曲の分野にも多くの作品が残されていて演奏される機会は決して少なくないのですが、ブリテンの場合は若い頃の作品以外にはほとんどそうしたチャンスもありません。
その中で数少ない例外が3つの弦楽四重奏曲、そして3つのチェロ組曲です。
弦楽四重奏曲はそのうちの第1番op.25と第2番op.36が、ブリテン最初の長編オペラ『ピーター・グライムス』op.33の前後に書かれ、そして第3番op.94がほぼ生涯最後の作品(最後はop.95)ということで、ブリテンの最盛期の最初と最後を飾っています。
そしてチェロ組曲はいずれも最盛期の重要作の前後に成立しています。第1番op.72が後期ブリテンの作風を決定づけたといわれるオペラ『カーリュー・リバー』op.71のあと、第2番op.80は盟友ショスタコーヴィチに献呈されたオペラ『放蕩息子』op.81の前、そして第3番op.87がブリテン最後のオペラ『ヴェニスに死す』op.88の前ということで、ブリテンの後期をまるごと網羅する内容を誇っています。
長い音楽の歴史の中で紛れもない巨匠として認識されている数少ない大作曲家のひとりであるブリテン、その作品と生涯にまとめて触れるほぼ唯一の可能性であるはずの3つのチェロ組曲。
演奏され、そして聴かれるべき作品、金子鈴太郎さんに全3曲を一度に演奏していただけることとなりました。
詩と、ひらめきと、抒情と、情熱の全てが詰め込まれた傑作です。皆様、ぜひ聴きにいらしてください!
― カフェ・モンタージュ 高田伸也