19世紀には一般に聴かれることのなかったバッハの無伴奏作品が、音楽院などの教育機関では演奏家の間で「練習曲」として扱われていたという話。
ここで「練習曲」とは何かということが問題になってきます。19世紀に作曲された「練習曲」のうち、もっとも有名なもののひとつであるショパンのop.10とop.25は、それらが練習曲でありながらその範疇を越えた傑作であるということで、コンサートのレパートリーとして広く聴かれるようになりました。
そして、バッハの無伴奏チェロ組曲もやはり「練習曲」の範疇ではないという判断がなされ、コンサートで頻繁に採り上げられてきたという歴史の流れがあります。バッハの作品でいえば、チェンバロのために書かれた6つのパルティータ集やゴルトベルク変奏曲も「練習曲」Clavier-Übungとして構想・作曲されたものでした。
19世紀にチェロのための「練習曲」として構想された作品の中には、バッハの無伴奏チェロ組曲の存在を念頭に置いて、そこに辿り着く道程、もしくはその地点からの発展形として作曲されたとみられるものがあります。つまり、バッハ作品と同じく今後コンサートのレパートリーとして取り上げられる可能性を秘めた大変興味深い「練習曲」が数多く存在するのです。
「練習曲」の伝統が続いていた20世紀初頭まで脈々と演奏されながら、今では聴かれることの少ないそれらの素晴らしい作品を、バッハの無伴奏チェロ組曲 第4番と共に皆様にお聴きいただきます。
― カフェ・モンタージュ 高田伸也
今回はバロック時代と19世紀初期・ロマン派に照準をあてた無伴奏チェロのプログラムという事で、19世紀前半に一般的であったと思われるチェロと時代別の弓を持ち替え、比較演奏したいと思います。バッハの無伴奏チェロ組曲についても、また違った側面からお聴きいただけるのではないでしょうか。是非ご来場頂けますと幸いです。
― 武澤秀平