「フィガロと運命の扉」

2024年9月6日(金) 20:00開演

荒石果穂

ピアノ

伊藤公一

フルート (特別賛助出演)

豊嶋泰嗣

ヴァイオリン (特別賛助出演)

上森祥平

チェロ (特別賛助出演)


入場料金:4000円



予約満席|受付終了


〔会場〕
カフェ・モンタージュ ≫ 地図
京都市中京区五丁目239-1(柳馬場通夷川東入ル)
TEL:075-744-1070


【プログラム】

W.A.モーツァルト:
ピアノ協奏曲 第25番 ハ長調 K.503(フンメル編)


《終演後》スペシャル・レセプション開催!



フィガロハウスの扉をあけて

1785年の2月、演出家のシカネーダーがボーマルシェの演劇作品『フィガロの結婚』をウィーンで上演しようとしましたが、皇帝ヨーゼフニ世から上演禁止の命令が下りました。このシカネーダーというのはのちにモーツァルトと『魔笛』を共同で作ることになる人です。モーツァルトが宮廷のおかかえ台本作家ダ・ポンテの協力で『フィガロの結婚』のイタリア語オペラ台本を作る手はずを整えたのは、シカネーダーの上演禁止からまだ数日後のことでした。ちょうど同じころ、モーツァルトの父レオポルトがウィーンの息子を訪問し2か月間滞在しました。『フィガロの結婚』制作のどの程度までを父レオポルトが見ていたのかはわかりません。おそらく父がウィーンを去ったすぐ後のことと思われますが、モーツァルトはサリエリと共同でイギリスのソプラノ歌手ストレースのために一つのカンタータを共同制作します。その年末、皇帝ヨーゼフ二世がフリーメーソン「善行」のロッジ閉鎖を命令、このロッジに所属していたモーツァルト父子は「冠を戴く希望」ロッジに所属することになったといわれています。
年が明けて、『フィガロの結婚』が完成、皇帝ヨーゼフ二世から上演の許可が出て4月に初演を迎えることになります。モーツァルトの父レオポルトは娘に宛てた手紙の中で「今日はおまえの弟のオペラ『フィガロの結婚』が初めて舞台にかけられます。彼が成功すればすごいことですが、彼は驚くべき陰謀に巻き込まれています。サリエリたちが死に物狂いで、ありとあらゆる動きをするでしょう」と書いています。『フィガロの結婚』初演は予定通り行われ、ソプラノのストレースがスザンナ役を演じました。その3か月後、サリエリは自作オペラの上演のためにパリに行き、そのままおよそ1年間滞在して『フィガロの結婚』の原作者ボーマルシェ本人との共同でオペラ『タラール』の制作に打ち込みます。その間、『フィガロの結婚』はチェコのプラハで大成功をおさめ、モーツァルトは歌手のストレース達に誘われてプラハ訪問のあとでイギリスに行く計画を立てますが、父レオポルトに大反対され、ウィーンに留まることになったということです。翌年2月、プラハから戻ったモーツァルトは若きベートーヴェンの訪問を受けました。 その時「フィガロハウス」にはモーツァルトの弟子で1786年から住み込んでいた若きフンメルもいたはずです。時にモーツァルト31歳、ベートーヴェン18歳、フンメルは10歳でした。そのあと4月にモーツァルトは「フィガロハウス」を引き払って、家族とフンメルと共に街の中心部から少し離れた住居に引っ越します。 その翌月、5月28日にモーツァルトの父レオポルトが死にました。
フランス革命を予言したともいわれるボーマルシェの舞台作品を上演することが、その時代においてどのような意味を持っていたか。そこで皇帝ヨーゼフ二世、モーツァルト、サリエリがどういった役割を果たしたのかはわかりませんが、ほどなくしてヨーゼフ二世の命によってサリエリは宮廷作曲家から宮廷楽長に昇格、モーツァルトはサリエリの跡をついで宮廷作曲家に任命されます。モーツァルトの給料は前任サリエリのほぼ倍額、そのあと、宮廷楽長への道もほぼ確定とされている中で死ぬことになります。

今進行中のシリーズ「フィガロハウスのモーツァルト」では『フィガロの結婚』初演(1786年4月)のあと、モーツァルトの創作におけるひとつの頂点とされるピアノ協奏曲 第25番と交響曲「プラハ」(1786年12月)までの8か月の間に作曲された室内楽作品を辿っています。これもヨーゼフ二世の文化政策変更から、ウィーンでの自主演奏会の数が極端に減ってしまったモーツァルトが、おそらくは公にする目的でなく作曲したのではないとされる作品の数々。音楽内容の驚くべき豊富さに対して、今だまったく批評の追いついていない名作を連続して採り上げています。
今回はいよいよフィナーレ。MONTAGE+の枠組みを越えて、ピアノ協奏曲の金字塔とされる第25番を、かつてモーツァルトの弟子であったフンメルが編曲した室内楽版をお聴きいただく豪華公演です。
演奏はソリストに昨年シマノフスキ国際コンクールに見事優勝し、京都市立芸術大学の大学院を卒業された荒石果穂さん。そして特別賛助出演として、現在、京都市芸大で教鞭をとっていらっしゃる豊嶋泰嗣さんと上森祥平さん、そしてかつて京都市交響楽団で30年に渡って首席奏者を務められ、京都市芸大でも指導にあたられていた伊藤公一さんをお迎えいたします。なんと賛助出演の皆様は、ご自身の出演料分を全て本シリーズ出演の京都市芸大の学生の皆さんに分けて欲しいという事で、今回特別にご参加いただけることになりました。
まさに一期一会のフィナーレ公演、皆様どうか聴きにいらしていただけますよう、お願いする次第です。


終演後にはシリーズのフィナーレを祝してレセプションを開催します。ご来場者様のご参加無料です。ドリンク片手にゆっくりと終演後のひとときをお過ごしください。


― カフェ・モンタージュ